ウソはダメ。ホラはアリ?

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令和3年8月30日  今日もクルクル通信1107号
本ブログは、(株)SURGING中田雅之のブログです。
今日もクルクルうねって、胸にぐっとクル気づきを書いていきます。
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『高熱隧道』という、吉村昭のノンフィクション小説があります。

これは、300名を超える死者を出した、「世紀の難工事」とも言われる、黒部ダム建設を題材にした小説です。

『プロジェクトx』をご覧になった方もいらっしゃるとは思いますが、「聞きしに勝る」とは、まさにこのこと。何度言葉を失ったか?分かりません。

未だ、黒部ダムに行ったことのない私は、「行ってみようか?」という気持ちと、「いやいや、行かなくても良いんじゃないか」って気持ちが半々になっております。

この小説の中に、こんなシーンが出てきます。

隧道即ちトンネル工事現場で、坑道をさらに掘り進めるために、切端と呼ばれる、最先端の壁に発破用ダイナマイトを詰めます。

ところが、その詰め込んだ8つのダイナマイトが、自然発火し、大爆発を起こしてしまいます。

その大爆発に巻き込まれた、8人の工夫全員が即死。その衝撃で、体もバラバラになってしまいます。

なぜ、自然発火なんてことが起こるのか?

それは、坑道内の温度が60℃を超えてしまっていたから。

火薬取締法で、発破用ダイナマイトの使用は40℃が限界とされていたにもかかわらず、使用してしまったから。(というか、使用させざるを得ない状況だったから)

では、なぜ、そんなに坑道が熱いのか?

それは、ダム建設地域が、温泉の湧出地帯だったから。工事現場の近郊は、最大166℃まで達していたそうです。

その熱さが、書籍のタイトル『高熱隧道』の由来にもなっています。

人は、60℃を超える場所にいると、数分で皮膚に水ぶくれができてしまうそうですが、この現場では、工夫と「水かけ夫」(ホースで後ろから水をかけ続ける)が、2人一組になって、作業をしていたそうです。

ですが、そこは、熱々のフライパンに水をかけているかの如く、のべつ湯気立つ続けるそんな現場。眼鏡をかけていたら工事が担当できませんね。

そんな灼熱の坑道内でダイナマイトが爆発した時、工夫たちは、恐怖で動けなくなってしまうのですが、

事務所長(工事責任者)である、根津という男は、湯気が湧き立ち、前が見えない中、事故現場まで一人で向かっていきます。

そして、そこで発見した、バラバラで、血だらけになった工夫の死体を、トロッコに乗せ、外に運び出します。

その淡々と、悠々とした様に、工夫たちも落ち着きを取り戻し、それを手伝うようになります。

最終的に、根津は畳み針と糸ですべてを縫い合わせ、8人の遺体の「形」にして、遺族に引き渡します。

不謹慎ながら、「神経衰弱かよ!」というツッコミを入れていた私をお許しください。

 

これが、実際にあったのかどうか?は分かりません。

作者が挿入したフィクションだったかもしれません。

しかし、震えましたね。

このシーンはあまりに象徴的ですが、小説の中には、いくつもの事故。

現場内での工夫頭と工夫。工夫と技師。会社と現場。県と国。会社と国。

数多くのステークホルダーの中で、思惑の相違が生まれ、衝突がありながらも、黒部ダムが造られていく過程が生々しく描かれています。

その最前線の現場をまとめるのが、隧道工事100キロメートルの実績を持つ事務所長の根津と課長の藤平という人物です。

藤平は、このダイナマイト事故の時に、恐怖で全く動けなくなってしまうのですが、それ以降の凄惨な事故を率先して処理していくようになります。

そんな彼が、小説の中盤以降に、バラバラの死体を繋ぎ合わせた、根津の行為に対して、

「もしかして、あれは演技なんじゃないか?」

と思うシーンがあるんです。

チームをまとめていくための、プロジェクトを前に進めていくための演技じゃないか?と。

これまた作者のフィクションなのかもしれません。

しかし、プロジェクトマネジャーならやりうる。

プロジェクトマネジメントを少なからず生業にしてきた私としては、そんな事を思わずにはいられなかったんですよね。

思惑も価値観も、時に目的すら異なる複数のステークホルダーのまとめ、プロジェクトを前に進めていくためには、演技もホラも時に必要になるんです。

事実無根のウソはダメですが、根となる事実があり、それを膨らませ、大袈裟に言うホラは時にアリ

という教育を受けました笑

とは言え、命とははるかにかけ離れた広告のプロジェクトマネジメントと、命を賭す隧道工事現場のそれを一緒にするなよ!

ってツッコミも頂戴しそうですが…プロマネという観点では重なる部分も多分にあると思うんですよね。

 

ということで、先日もご案内させて頂きましたが、

「プロジェクトマネジメントの仕事を一緒にやっても良いよ」という人がいましたら、是非ご連絡を下さいませ。

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【今日のうねり】
プロジェクトマネジメントには、ウソは駄目だが、ホラはありなのだ。
というか、時に必須となるのだ。
なぜなら、プロジェクトを前に進めていくためには、思惑も価値観も、時に目的すら異なる複数のステークホルダーのまとめ上げることが必要なのだから。
そんな能力は希少性があるのだ。